奄美島おこしプロジェクトについて
奄美群島は、九州南方から台湾東方へ連なる南西諸島の半ばに位置し、奄美大島、加計呂麻島、請島、与路島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島の8つの有人島とその周辺に点在する無人島から構成される島嶼群です。 亜熱帯性の気候に属する豊かな自然環境と相まって、珍しい動植物が数多く生息していますが、長い年月をかけて大陸及び日本列島との接続~分断を繰り返してきた地史から、世界的に他に類を見ない遺存固有種・絶滅危惧種の宝庫となっているため、広大な亜熱帯照葉樹林を中心とする特異な生態系は、地球規模での生物多様性を保全する上できわめて重要な地域として評価されています。2013年1月、日本政府は「奄美・琉球」を、世界自然遺産候補地としてユネスコ(国連教育科学文化機関)に推挙することを正式に決定しましたが、この自然環境を保全・管理するための仕組みや手立てについて、十分な体制が準備されていないとの指摘があります。
また、奄美の文化はその立地環境から、自然との深い関わりを基盤としつつ、大陸や半島との交流や、琉球~薩摩などによる介入など、本土や沖縄とも異った歴史的背景を持っています。このため、島唄をはじめとする伝統芸能にも南方系と北方系の歌・演目が入り交じったものが見られるなど、琉球文化や大和文化などが溶け合った文化が形成されています。また、方言で集落を「シマ」と呼び、「シマ」毎に言葉や習俗が異なり独自の方言が残るなど、多様化した文化を見ることができます。ただし、奄美の方言は他の琉球諸語同様、ユネスコによって「消滅危機言語」に分類されるまでに、話者を失いつつあります。 産業生産においては、外海離島ゆえの過疎化・高齢化が急速に顕在化しており、また、かつて奄美地域の経済を支えた『大島紬』も、社会のライフスタイルの変化に伴う和装の衰退によって市場の縮小を余儀なくされ、高度な伝統工芸技術の継承も危ぶまれる状況となっています。
このように、奄美には世界に誇るべき自然や文化が存在するものの、その多くは次第に消失の淵に追われつつあり、他の地域にはない固有の風土的な魅力と資源は、汎く知られることのないまま永遠に失われてしまうことにもなりかねません。奄美島おこしプロジェクトは、これまで課題要因として捉えられてきた地理的・自然的条件等を、他の地域にはない優位性として捉え、古くから自然と共生してきた伝統的な暮しと文化、生活のあり方などを見直すことで地域の活力を賦活し、これまであまり行われてこなかった様々な試みを通じて地域振興の突破口を見出そうとするものです。